ある朝、何の前触れもなく、15歳の猫「ちいちゃん」が下半身不随になりました。
後ろ足を引きずり、上半身だけで必死に動き回るその姿を見て、私は会社に嘘をついて病院へ向かいました。
あの朝から5年、猫の介護と仕事を両立しながら、今日もちいちゃんの世話をしています。
同じように突然の異変に直面している方、介護が続くなかで限界を感じている方に、この体験が少しでも届けばと思い書きました。
この記事でわかること
- 猫が突然、下半身不随になったときに直面するお金・仕事・介護の現実
- 猫の排泄介助・強制給餌を一人でこなした方法と失敗談
- 下半身麻痺の猫と暮らしながら、仕事と介護を両立するためにやったこと
- 完璧じゃなくても介護を続けられた理由
1|猫が下半身不随になった朝——突然すぎて、何も考えられなかった

コロナ禍の在宅勤務が終わり、久しぶりの出勤日の朝でした。
ちいちゃんは後ろ足を引きずりながら、上半身だけで必死に動き回っていました。何が起きたのか全くわからない。ただ「普通じゃない」ということだけははっきりしていました。
私はその場で会社に電話し、「親が病気」と嘘をつきました。
気が動転していましたが、猫の異変でとっさに嘘をついたことを、今でも少し覚えています。
原因は背骨のズレによる神経圧迫と出血
最初の病院では原因が特定できず、その日のうちに設備の整った別の病院を紹介されました。
車で40分。ほぼペーパードライバーの私には、それだけでも必死でした。
検査の結果は、背骨のズレによる神経圧迫と出血。
その時のちいちゃんの体重は7キロ。よくタンスの上からベッドに向かってジャンプをしていました。
その時の衝撃が積もり積もって背骨にきたのかもしれません。
そして告げられた言葉。
「このままだと、1週間もたないかもしれない」
2|猫の下半身不随、手術費用と入院費——50万円をどう準備したか

その日のうちに、手術を決めました。
手術費用:約30万円 入院費用:約20万円 合計:約50万円
「猫の手術にそこまで」と思う人もいるかもしれません。でもそのとき私には、「このまま何もしなければ命に関わる」という事実しかありませんでした。
親と相談して、家族みんなでお金を出し合いました。準備があったわけではない。ただ、その場で決めるしかなかった。小さな命を守るためとはいえ、現実的な重さを強く感じた瞬間でした。
ペット保険に入っていなかったことを後悔した
今だから言えますが、当時ペット保険には入っていませんでした。
まさかこんなことになるとは思っていなかったから。
これは、同じ状況になる前にぜひ知っておいてほしいことです。
3|猫の介護と仕事の両立——限界だった3ヶ月間

退院後は、仕事終わりに往復1時間半の通院が3ヶ月続きました。
朝晩くり返した、猫の介護ルーティン
朝起きてから出勤まで、帰宅してから寝るまで。毎日くり返したのはこの4つです。
- カテーテルでの排尿
- 排便の介助
- 食べられない日は強制給餌
- 毎日の投薬
フルタイムで働きながら、これを一人でこなしていました。
昼間は母親にみてもらうことができましたが、実際に強制給餌や排泄の仕方は私しかできなかったので
とても大変だったのを覚えています。
「猫の介護で早退します」と言えなかった
仕事を早く上がるとき、私はいつも「親が病気で」と伝えていました。「猫の介護で」とはなかなか言い出せなかった。
理解してもらえるかわからない怖さと、少しの後ろめたさ。でも時間はなくて、毎日そうするしかありませんでした。
毎日、時間にも気持ちにも余裕がなくて、正直どうやって続けていたのか覚えていないくらい必死でした。
4|猫の排泄介助と強制給餌——怖くて、うまくいかなかった日々

退院直後のちいちゃんは、食べない、飲まない、動けない。
「このまま死んでしまうのでは」と何度も思いました。
カテーテルも強制給餌も、最初は怖かった
獣医さんにやり方を教わって、その場で練習しました。それでも家に帰ると、うまくいかないことばかりでした。
カテーテルがうまく入らず、何度もやり直すうちに腕が痙攣したこともあります。強制給餌では、喉に詰まらせないか怖くて手が震えました。
知識があっても、「実際にやる」のはまったく別物でした。
猫の排便介助——ネットに情報がなくて、自分で試した方法
排便については、ネットにもほとんど情報がなくて本当に困りました。
そのとき、ふと思い出したんです。ちいちゃんが赤ちゃんの頃、お尻を刺激して排泄させていたことを。試しに手でポンポンと刺激してみると——排便ができました。
正しい方法かは、今でもわかりません。 でも、そのときの私にはそれしかありませんでした。
5|寝たきりだった猫が、また動き出した日
最初は何も食べなかったちいちゃんも、少しずつ水を飲むようになり、少しずつ自分でご飯を食べるようになっていきました。
前足だけで動き回る姿を見たとき——
「この子は生きようとしてる」
そう強く感じました。
6|猫の下半身不随介護を5年続けて、気づいたこと
もし今、突然の介護に直面しているなら、完璧にやろうとしなくて大丈夫です。わからないまま、それでもとりあえずやってみるしかない場面は必ずあります。
下半身麻痺の猫と暮らして、あの頃の自分に伝えたいこと
「頑張るけど、頑張りすぎるな」
「一人で抱えなくていい」
「この子はちゃんと生きようとする」
ちいちゃんは今日も、前足だけで私の布団に向かってきます。
「1週間もたない」と言われたあの子が、5年後もそこにいる。

完璧な介護じゃなかった。嘘をついて早退して、手が震えながらやった。それでも続けてきたことが、介護だったんだと今は思います。
うまくできなくてもいい。
続けていること、そのものが介護だったと今は思います。
もし同じ状況で孤独を感じているなら、この記事がすこしでも「自分だけじゃない」と思えるきっかけになれば、それだけで十分です。

