「大好きな猫なのに、介護に疲れてしまった」
「食べてくれないことにイライラする自分が嫌になる」
そのように感じていても、愛猫への愛情がなくなったわけではありません。介護する飼い主も、疲れたり、眠れなくなったり、思うようにいかず腹が立ったりする一人の人間です。
私も、15歳で突然下半身不随になった愛猫のちいちゃんを約5年間、自宅で介護しました。排尿や排便の介助、食事の準備、強制給餌、服薬、体を清潔に保つケアが続くなかで、「誰か代わってほしい」と思ったことがあります。
それでも当時は、「ちいちゃんは頑張っているのに、私がこんなことを考えるなんて情けない」と自分を責め、弱音を吐けませんでした。
今なら、あのころの自分に「疲れたなら、少し休んで。できるなら、とにかく寝て」と伝えたいです。
この記事では、私が老猫の介護でつらかったことや、限界になったときに作った休息の時間についてお話しします。介護を完璧にする方法ではなく、飼い主が倒れずに愛猫との生活を続けるための方法を一緒に考えていきましょう。
この記事でわかること
- 老猫の介護に疲れてしまう主な原因
- 罪悪感を手放すための考え方
- 仕事と介護を両立するコツ
- 疲れを軽くする具体的な方法
- 限界を感じたときの休み方
老猫の介護に疲れるのは愛情がないからではない
老猫の介護に疲れたと感じるのは、決して愛情が足りないからではありません。
介護は、一度頑張れば終わるものではありません。食事、排泄、投薬などのケアが毎日続き、猫の状態によっては夜も気が抜けません。そこへ仕事や家事、通院、治療費の不安まで重なれば、心身が疲れるのは自然なことです。
往診専門のよつば動物病院も、長期間の介護は心身へ大きな負担を与えるものであり、「しんどい」と感じることは愛情不足の証ではないと伝えています。
私も介護中は、「私だって人間。ロボットのように、ただ介護だけを無心でやっているわけではない」と思える余裕がありませんでした。疲れていても介護をしなければならず、思いどおりにならないとイライラする。今度はそんな自分に罪悪感を持つ。その繰り返しでした。
疲れたことと、愛猫を大切に思っていないことは同じではありません。むしろ、大切だからこそ「きちんとやらなければ」と一人で抱え、休めなくなっていることもあります。
私も「ちいちゃんは頑張っているのに」と自分を責めていた
介護に疲れたと思うたびに、私は罪悪感を持っていました。
「ちいちゃんは頑張っているのに、私がこんなことを考えるなんて情けない」
「ちいちゃんが頑張っているのに、私だけ弱音を吐くわけにはいかない」
そう考えていたため、誰かに「つらい」「休みたい」と言うことにも抵抗がありました。
けれど、当時の私が抱えていたのは猫の介護だけではありません。家族を養うために収入を得る必要があり、フリーランスとして始めたデザインの仕事では大きく失敗したと感じ、クライアントワークそのものが怖くなっていました。
一つだけなら耐えられたことも、介護、仕事、お金、家族の問題が同時に重なると負担は大きくなります。介護に疲れたときは、自分の気持ちの弱さだけを原因にせず、何が重なっているのかを一度整理してみてください。
私が老猫の介護で特につらかったこと

介護の大変さは、排泄介助や強制給餌といった作業の多さだけではありませんでした。
「この子はこれからどうなるのだろう」という不安や、決まった時間までに帰らなければならない緊張が、常に頭から離れないことも大きな負担でした。
食べてくれない不安がイライラに変わった
介護を始めた直後、ちいちゃんはほとんど食べたり飲んだりしてくれませんでした。
突然後ろ足が動かなくなったことを、ちいちゃん自身も受け止められず、生きる気力をなくしてしまったような顔に見えました。その姿を見るのが本当につらく、「また食べてくれるようになるのだろうか」と不安でいっぱいでした。
それでも全然食べてくれないと、「どうして食べてくれないんだろう」とイライラすることもありました。
食べてほしいのに食べてくれない。何がいけないのか、何を出せば食べるのかも分からない。心配、不安、焦りが重なり、行き場のない感情がイライラへ変わっていたのだと思います。
猫が食べない理由には病気や痛み、吐き気などが隠れていることもあるため、食欲低下が見られたときは「私の与え方が悪い」と一人で抱えず、動物病院へ相談することが大切です。食べさせ方や食事内容、必要な介助についても、猫の状態に合わせて獣医師と相談してください。
排尿時間に縛られ、頭から介護が離れなかった
ちいちゃんには決まった時間の排尿ケアが必要でした。そのため、「この時間には家にいなければならない」という生活になりました。
外出していても、次の排尿時間が気になります。家を離れていても頭の中から介護が消えず、気持ちが完全に安らぐことはほとんどありませんでした。
夜も、何か明確な異変があるわけではないのに、なんとなく不安で眠れないことがありました。介護の作業をしていない時間も、心はずっと介護を続けていたのだと思います。
仕事・通院・副業が重なり休む時間がなかった
会社員をしながら介護していたころは、朝5時ごろに起きていました。
朝は、ちいちゃんの排尿ケア、ご飯の準備、強制給餌を行い、それから犬の散歩、自分の朝食、出勤準備を済ませます。7時30分ごろには会社へ向かっていました。
通常なら夕方6時ごろに排尿ケアをしていましたが、残業すると帰宅後の排尿が夜8時ごろになることもあります。排尿時間が遅れると、おむつから尿が横漏れし、かえって洗濯や掃除が増えることもありました。
帰宅後は排尿させて終わりではありません。食事や薬、介護食を食べやすい温度にし、必要なときには強制給餌もします。
さらに、会社の給料だけではお金が足りなかったため、介護が終わったあとに在宅の副業をしていました。それからようやく眠る生活です。
残業、介護、通院、副業が重なった時期は、体も気持ちも疲れ切っていました。
毎週減っていく治療費も怖かった
フリーランスになったばかりで、収入がほとんどなかった時期には、治療費への不安も大きくなりました。
病院へ通うたびに、「いつまでこの金額が続くんだろう」と考えていました。毎週のように一万円札が何枚もなくなり、貯金が減っていく感覚がとても怖かったです。
愛猫の状態が心配なのに、その一方で「この先も治療費を払い続けられるだろうか」と考えてしまう。そのことにも罪悪感がありました。
しかし、治療費のことを考えるのは、愛情がないからではありません。生活を維持しながら介護を続けるには、現実のお金も必要です。費用が苦しくなったときは、言い出しにくくても、動物病院へ治療の優先順位や今後の見通しを相談してよいと思います。
「誰か代わってほしい」と思った私を助けた小さな協力

介護中、私は何度も「誰か代わってほしい」と思いました。
家族も手伝ってくれましたが、できるのは簡単な介助が中心でした。本当は排尿の方法、ご飯の与え方、排便ケアまで覚えてもらい、私がいなくても介護できるようになってほしいと思っていました。
しかし、そこまで任せることは難しく、結局は私が中心になって介護を続けました。
それでも、一人ではカテーテルを入れられなかったため、家族がちいちゃんの体を押さえてくれるだけでも助かりました。
介護のすべてを代わってもらえなくても、一部分を手伝ってもらうことには意味があります。
「介護を手伝って」ではなく一つの作業を頼む
家族へ頼むときは、「介護を手伝って」と大きく頼むよりも、具体的な作業を一つ伝えた方が頼みやすくなります。
- ケアの間、猫の体を支えてもらう
- ご飯や必要な用品を用意してもらう
- タオルやペットシーツを交換してもらう
- 洗濯や買い物など、介護以外の家事を代わってもらう
- 飼い主が仮眠している間、猫の様子を見てもらう
専門的なケアを任せられなくても、自分の作業が一つ減るだけで休める時間が生まれます。
頼れる人がいない場合や、家族だけでは難しい場合は、動物病院へ一時的な預かり、往診、地域のペットシッターや訪問介護などについて相談する方法もあります。ただし、対応できるケアや医療行為、猫への負担、料金はそれぞれ異なるため、事前の確認が必要です。
老猫の介護に疲れたとき、まずしてほしいこと
限界まで頑張ったからといって、必ずしもよい介護ができるとは限りません。疲れ切ったままでは、猫へ優しく接する余裕も失われてしまいます。
介護を完全に休めなくても、介護と介護の間に自分を休ませる時間は作れるかもしれません。
本当に緊急でなければ、まず寝る
今、当時の自分へ一番伝えたいのは、「とにかく寝て」ということです。
眠っている間も猫のことが気になり、休むのが怖いこともあります。それでも、寝不足が続けば判断力も気力も落ちていきます。
必要な介護の間隔は猫の病気や状態によって違います。自己判断で食事、投薬、排泄ケアなどを中止するのではなく、どのくらいなら休めるか、夜間のケアを調整できないかを獣医師へ相談してください。
東京都動物愛護相談センターが紹介する介護体験には、夜鳴きによる寝不足を動物病院へ相談し、獣医師の処方によって飼い主と動物がともに眠れるようになった例もあります。「介護だから眠れなくて当たり前」と我慢せず、猫の症状と自分の睡眠不足を一緒に伝えることも大切です。
介護と介護の間に自分の時間を作る
疲れがたまったある日、私は有給休暇を取りました。
ただし、ちいちゃんの排尿ケアがあるため、一日中自由に出かけることはできません。そこで、朝の排尿ケアを終えてから夕方の排尿時間までを、自分のための時間にしました。
近くの温泉へ行き、大好きなパフェを食べ、足つぼマッサージを受けました。別の日なら、ただ寝たり、好きなものを食べたりするだけでもよかったと思います。
夕方には家へ戻り、またちいちゃんの介護をしました。
介護を完全にやめられなくても、数時間だけ介護から離れることはできます。丸一日休めないからと諦めず、次のケアまでの間で、どのくらい自分の時間を取れるか考えてみてください。
今日やらなくても困らないことを一つやめる
介護中は、普段どおりの家事や仕事まで完璧に行おうとすると、休む時間がなくなります。
部屋の掃除、手の込んだ食事、急がない用事など、今日やらなくても困らないことを一つだけやめてみてください。
介護そのものを減らしたい場合は、必要なケアを自己判断で省かず、動物病院へ相談します。通院頻度、投薬方法、食事介助、排泄ケアなどを、猫の状態と飼い主が続けられる範囲の両方から見直せることがあります。
好きなものを食べ、好きなことをする
休んでいるときでさえ、「こんなことをしていてよいのだろうか」と罪悪感を持つかもしれません。
けれど、好きなものを食べる、好きなことをする、自分のために時間を使うことも、介護を続けるために必要な回復です。
大きなことでなくて構いません。温かいものをゆっくり飲む、好きなお菓子を食べる、短い動画を見る、少し横になるなど、そのとき自分が「やりたい」と思うことを選んでください。
一人で続けられないときは動物病院へ相談していい
動物病院では猫の症状だけを話し、自分のつらさは隠してしまう方もいるかもしれません。
しかし、自宅で続けることが難しいケアや、飼い主の睡眠不足、仕事、通院、費用の負担も、これからの治療や介護を考えるための大切な情報です。
- 夜に眠れず限界に近い
- 食べさせることや投薬がうまくできない
- 排泄ケアを一人で続けるのが難しい
- 通院回数や治療費が負担になっている
- 今の治療や介護を続ける自信がない
こうしたことも、そのまま伝えて構いません。
介護方法は一つではありません。よつば動物病院も、今の形が動物や飼い主を追い詰めている場合には、介護方法を見直し、病院や施設などへ相談することを選択肢として挙げています。
治療や介護の内容を見直すことは、愛猫を見放すことではありません。猫ができるだけ穏やかに過ごせることと、飼い主が続けられることの両方を考えるための相談です。
イライラが抑えられないときは猫と少し離れてもいい
介護中にイライラしたときは、猫を安全な場所へ寝かせ、自分が落ち着くまで少し離れても構いません。
水や室温、転落の危険などを確認し、必要なケアまで少し時間を置ける状況であれば、別の部屋へ移動して深呼吸する、家族へ連絡する、短時間外の空気を吸うなどしてみてください。
もし猫へ手を上げそうなほど追い詰められているなら、我慢を続ける段階ではありません。まず猫と自分の安全を確保し、家族や知人、かかりつけの動物病院などへ、その日のうちに助けを求めてください。
「こんなことを言ったら責められる」と隠すより、「今は一人で介護するのが危ない」と伝える方が、猫を守ることにつながります。
5年間介護できたのは休まず頑張り続けたからではない
私がちいちゃんを約5年間介護できたのは、強くて、いつも前向きだったからではありません。
食べてくれないことにイライラし、「誰か代わってほしい」と思い、治療費が減っていくことを怖がり、弱音を吐く自分を責めていました。
それでも、限界になったときには有給を取りました。家族に介護の一部分を手伝ってもらい、排尿と排尿の間に温泉へ行ったり、好きなものを食べたりしました。
そして少し元気になったら、またちいちゃんのところへ戻りました。
介護を続けるとは、一度も疲れずに頑張り続けることではないと思います。休み、助けてもらい、また戻る。その繰り返しでもよいのです。
FAQ:老猫の介護に疲れたときによくある疑問
老猫の介護に疲れたと思うのは甘えですか?
甘えではありません。食事や排泄の介助、通院、夜間の見守りなどが続けば、心身が疲れるのは自然なことです。疲れたことと、愛猫への愛情がないことは同じではありません。
介護中にイライラしたときはどうすればいいですか?
まず猫を転落や誤飲などの危険がない場所へ寝かせ、自分が落ち着くまで少し離れてください。猫へ手を上げそうなほど追い詰められている場合は、一人で我慢せず、家族やかかりつけの動物病院へその日のうちに相談しましょう。
老猫を一時的に預けられる場所はありますか?
動物病院やペットシッター、訪問介護などが候補になります。ただし、高齢猫や医療的なケアが必要な猫に対応できるかは施設によって異なります。必要なケア、猫への負担、料金を確認し、まずはかかりつけの動物病院へ相談すると安心です。
まとめ|休むのは、また笑顔で愛猫のところへ戻るため

大好きな猫の介護でも、疲れることはあります。食べてくれないことにイライラしたり、「誰か代わってほしい」と思ったりする日もあります。
その感情だけで、これまで注いできた愛情がなくなるわけではありません。
疲れたなら、少し休んでください。できるなら、とにかく寝てください。好きなものを食べ、好きなことをして、自分のための時間を少しでも作ってほしいです。
一人では難しいときは、介護の一部分だけでも家族へ頼み、猫の状態だけでなく自分の睡眠、仕事、費用の負担も動物病院へ伝えてください。
休むのは、介護をやめるためではありません。
少し元気になって、また笑顔で愛猫のところへ戻るためです。


